ずっと離さない
矢道通
月 曜 日。
誰もが絶望の淵に立たされる呪いの言葉。
そして俺はその言葉を無慈悲に浴びせられていた。
「はぁ~~~」
ため息しか出ない。これからまた一週間が始まってしまう。しかし、このままずっと布団の中に引きこもっているわけにはいかない。今年から大学進学のため親元を離れ、一人暮らしをしている。だから「早く行きなさい」と発破をかけてくる人もいない。彼女でもできればかけてくれるのかもしれないが……。
「しゃあねぇ、行くか」
ありもしない妄想をするのは止め、朝食や学校に行く準備をする。
朝食はいつもと変わらず、昨日の夜に炊いておいたご飯と納豆、それから手鍋に多めに作っておいた味噌汁。男の一人暮らしの朝食としては上々だろう。そのうちにふりかけご飯になる可能性も否定できない。
食べ終わり、食器を流し台に置いて鞄を持つ。スマホも忘れてはいけない。これは便利なもので、通常パソコンや大学の掲示板で見るべき休講のお知らせが届く。今日は特にお知らせはなかった。残念だ。
鍵を閉めて家を出て自転車に乗る。アパートは大学に程近い場所にあるのでそう時間はかからない。しかし時間はギリギリ。家が近くなると余裕をかまして結局余裕がなくなる、あると思います。
教室に着いた頃にはやはり講義が始まる時間ギリギリで、ほとんどの席が埋まっていた。教室の後ろには不思議な重力がかかっているのか、ほとんどの生徒が後ろの席にまわっている。後ろなら気楽に聞けたのにな。友人も俺と同じくギリギリに来る人だからまだ来ていないようだ。スマホでも弄って待っておこう。
「おはよー孝介ぇー」
程なくして友達のけだるげな声が来た。彼女は同じ高校から偶然同じ大学に進学してきた。特に示し合わせたわけでもなく、たまたま同じだった。普段は割と活発なスポーツ少女なのだが、朝には勝てないらしく、このありさまである。
「相変わらずダルそうだな」
「そりゃ朝だもんー。でもねー、今日は目覚まし時計よりも早く起きれたんだよねー」
「珍しいこともあるんだな。生田は何個も目覚まし時計を使うことで有名なのに」
「もうそれだけで今日は“喜びforever”だよ。二度寝したからいつもとおんなじ時間だけど」
「それ起きた意味ない……」
「それでも目は開いたんだからそれはもう起きたも同然だよ」
「ならもう少し余裕をもって学校に来なさい」
「はぁーい」