終わり無き
綾瀬琉香
海の青と空の青。
他に色はなく、白いワンピースも青に呑み込まれそうだ。
跳ね返る光に目を細め、閉じた。
彼らは、塔に住んでいるんだと皆が言う。
最上階の水の階から金、地、火、木、土、天、海と下がっていく。
どこからか人は生まれ、ほとんどが生まれた階で過ごす。
いや、生まれ落ちたと言う方が正しいだろうか。
「君はどうして、降りるの?」
少女に水の階の少年は聞く。
時計塔の住人は、階を動くことを選ぶ人も極少数。時計塔の外へ出ようなんて者はいない。
「光を見たいから」
塔には窓はないが光は通っており、温度と淡い光はいつもある。
だから、住人達は時計塔の中の安全に満足して外に出ない。
十二分に好きなように暮らせるから、必要ない、と住人達は言う。
「そうか」
諦めたような水の階の少年の後ろには、石盤がある。
石盤は少女の視界を覆い尽くすような大きさだ。
石盤には時計塔の外の世界の光の絵が描かれている。
少女は、階を一つ降りた。